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zoom RSS ガンダム小説 高機動型ハイザック物語

<<   作成日時 : 2006/08/17 16:36   >>

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 「こ、これは!ジオンの・・・」
 これから乗り込もうという試験機を目の当たりにして、俺の口をついたのはそんな科白だった。
 時はU.C.0087。旧式化しつつある我が連邦の主力機ハイザック。その性能を今日的レベルに引き上げるためのアップデートプランを施された改良型が、今回俺がテストすることになる機体だと聞かされていたのだが、いま俺の目の前にあるのは、かつての敵国である旧ジオン公国の英雄「黒い三連星」の搭乗機―高機動型ザク―と見紛うばかりの黒と紫を基調とした塗装を施された機体だったのである。
 「中尉、ハイザックですよ。これは。大幅に改良が加えられてはいますが」
 俺をこのMSデッキまで案内してくれたアナハイムの技術員が応えた。
 なるほど、脚部に増設されたスラスター類や、背面の大型ランドセルなど、ノーマルとは異なっているが確かにハイザックだ。それにしても・・・。
 「だが、この色は?」
 「はあ、なんでもこうしておくと『ジオンの英雄である黒い三連星のザクを従える』ことになるので、我が連邦の圧倒的勝利を印象付けるとかで、ティターンズの偉いさんにも受けがいいんだそうです。ま、ティターンズ配備のノーマルハイザックが緑に塗られているのと同じ理屈ですね」
 三連星を従えて―か、たいそうなことだと思いつつ、俺はその改良機のコクピットに乗り込んだ。操縦系統はノーマルハイザックと変わりないらしい。
 「中尉には、これから技術士官のワ―ル大尉と組んでいただいて、わが社の新型機であるマラサイタイプと2対2の模擬戦をしていただきます。次期主力機を決めるための大事な模擬戦です。心して掛かってください・・・」
ひととおり模擬戦の説明を受けたあと、コクピットハッチを閉じる。
 全周スクリーンに外界が映し出される。隣にワール大尉が乗る1号機、カタパルトデッキを挟んで向かい側に新型のマラサイタイプとかいうのが2機。これには俺と同じテストパイロットのフォルカー中尉とローランド少尉が乗り込むことになっている。
 「ベルトラン=ガードナー中尉。テスト2号機、出るぞ!」
 彼らよりひと足早く、俺は乗機―RMS-106R高機動型ハイザック―をカタパルトへ載せると宇宙空間へ飛び出した。
 なんという加速性、スロットル操作は相当シビアだが従来機とはまるで別物だ。「扱いやすい機体」がイコール「速い機体」ではないということか。これが同じハイザックという名で呼ばれるMSだとは俄かに信じ難い。機体各所に装備された多数のバーニアのなせる業なのか、前後方向のみならず上下左右あらゆる方向に対して縦横無尽の機動性を発揮する。俺はこの
106Rの型番をもつ高機動型機の虜になった。
 俺が106Rの機動性をしばし堪能していると、フォルカーとローランドのマラサイ、続いてワール大尉の1号機が出てきた。
 フォルカーとローランドのマラサイは、なるほど新型らしいスムーズな動きだが、一方のワール大尉は・・・高機動型とは思えぬぎくしゃくした動きを示している。
 「おわっ!なんだ、この機体は!!全然いうことをきかないじゃないか」
 大尉の悪態が通信機越しに伝わってくる。それほど操縦困難な機体でもなかろうに、なんであんな奴がテスト機のパイロットなのだ!?
 とにもかくにも模擬戦は行わなければならない。俺とワール大尉、フォルカーとローランドの2陣営に分かれて周囲を浮遊している岩塊に機体を潜めた。
 コンソールパネルに「START」の文字が浮かぶ。模擬戦の開始だ。
 俺は勢いよく飛び出すと、先程確認しておいたフォルカーのマラサイがいるとおぼしき岩塊を目指す。
 「大尉、自分が出て連中を引き付けます。大尉は後方から援護を」
 俺は一応チームメイトのワール大尉に支援を乞うてみた。少しでも戦局を有利に展開するためにだ。
 だが、予想通り、機体の姿勢制御すら覚束ないワール大尉の1号機からの支援はなかった。
 フォルカーのマラサイがライフルを向けてくる。さらにローランドも岩塊を飛び出してきた。
 挟み撃ちにするつもりか。
 だが、照準は定めさせない。106Rの高機動は従来機では不可能な回避行動も可能にする。耐Gスーツの締め付けは厳しかったが、日頃鍛えた俺の肉体は通常の何倍ものGに耐え抜き高機動を行った。
 フォルカー機の背面に回りこむ。
 照準レティクルにマラサイが重なる。
 LOCK。
 「FIRE!」
 トリガーを引く。もちろん実際にビーム弾が発射されるわけではないのだが。
 亜光速で弾丸が飛ぶビーム兵器の場合、弾丸が射出されてから目標に到達するまでの時間は無視してよいので、照準をロックし、トリガーを引いた時点で命中と見なされる。模擬戦は、ペイント弾を用いずビームライフルのセーフティモードをONにした状態で行われるのだ。
 1機撃墜。
 続くローランド機も、106Rの高機動の前では敵ではなかった。体制を立て直そうと近くの岩塊に向かったところを難なくロックできてしまったのだった。
 模擬戦終了。
 期せずして、このマイナーチェンジ機に過ぎない106Rの優秀性を証明することとなった。

意気揚々と帰投し始めたときだ。モニターの片隅の岩塊上に何やらきらりと光るものが映った。
望遠モニターに切り替える。ズームアップしていくと、それは・・・山越えカメラだった!偵察用のそのカメラからはワイヤーが伸びていて、こちらから見て岩塊の裏側へと続いている。
偵察機がいるな。
「フォルカー、ローランド、お客さんだぞ。エゥーゴの連中、こんなところまで進出していようとはな」
 確かにこの宙域は、エゥーゴ勢力とのいわば緩衝地帯と呼べる宙域だ。模擬戦の最中に敵と遭遇することも十分にありえたのだ。エゥーゴというのは、一年戦以来やっと訪れた地球圏の平和を乱すテロリスト集団だ。しかも奴らは一兵卒にいたるまで自らの意思で軍事行動を行っている。国政の都合で意思にかかわりなく戦闘に駆り出される国家所属の兵隊とは違う。連中相手に遠慮はいらない。
 俺はビームライフルのセーフティーモードを解除した。 
 俺と二機のマラサイは、カメラのある岩塊へと向かった。ワール大尉は、相変わらず機体の取り回しに四苦八苦しているようだ。
 岩塊への距離を詰める。偵察機のパイロットも発見されたことに気づいただろう。
 岩塊から偵察装備のGMUが現れる。と同時に別の岩塊から三機のGMUが。いずれも塗色はグリーン。エゥーゴカラーだ。
 護衛を連れて偵察とは・・・さては連中、あわよくばテスト機の奪取などということまで目論んでいたか。
 撃ってきた。今度はもちろん実弾だ。だが幸いなことに実体弾式のマシンガンらしい。弾速は遅く、しかも命中した場合の脅威も少ない。とはいえ、旧来型の装甲であるハイザックでは被弾は禁物だ。
 俺は多大な体力的負担に耐えながら、高機動で回避した。
 一方のマラサイは・・・耐えている。さすが新素材のガンダリウム合金製の装甲だ。実体弾式の火器など問題にならないといった調子で、ろくに回避行動も取らずにGMUに向かって行く。射撃も落ち着いて行えるようだ。偵察装備のGMUが、たちまちマラサイのビームライフルの餌食になった。これで連中の目的の大半は果たせなかったことになる。
 俺も一機のGMUに照準を合わせトリガーボタンを押した。
 撃墜・・・のはずが当たっていない。ビーム弾は目標から逸れて発射されたようだ。
 「照準が狂っていたのか」
 先のような模擬戦では、こういった整備不良を発見できないのが欠陥だ。
 「ちっ、ならば接近戦で。大尉、援護してください!」
 だが、戦域に近づいたワール大尉は臆病風に吹かれたか、岩塊の陰に隠れて出てこない。
 俺はメインスラスターを全開にすると、GMU目掛けて突っ込んだ。
 懐に飛び込めば、腰部に装備されたヒートホークでなんとか仕留められるはずだ。
 GMUがマシンガンを捨て、ビームサーベルを構える。
 こちらもヒートホークを・・・が、遅い!!普段訓練のときに使っているビームサーベルとは違うのか。
 GMUが斬り付けてくる。とっさにシールドで受け、多大なダメージを喰らいつつもヒートホークでGMUのメインエンジンを粉砕する。
 GMUが爆発し、四散した。閃光が瞬く。
 戦力の半数が消失したことを悟ってか、残りの二機のGMUは退却していった。こちらも追撃したかったがライフルも使い物にならず、第一、推進剤が切れかかっていたのだ。やはり106Rは大飯喰らいだ。

 斯くして模擬戦でマラサイタイプに勝り、実践で互角の戦果を上げた106Rであったが、ワール技術大尉の「操縦特性がシビア過ぎる」との言により正規の生産ラインに乗ることはなかった。
                                                    完



あとがき(用語解説など)

8年ぶりで小説書きました(8年前は、近藤先生の漫画に出てくる「対空砲火型のザクタンク」を主役に書いてます)。やっぱり(模型を)作ってると浮かんでくるんですよね、ストーリーが。
いくつか解説等したい箇所がありますので、順に列挙していこうと思います。


耐Gスーツについて
本物の戦闘機などで高機動を行った場合、血液が下半身に集中するのを防ぐため、パイロットスーツが締め付ける、という機構があるそうです。ただ、耐Gスーツで軽減できるGは1,5G程度だそうなので、それ以上はパイロットが一生懸命体に力をこめて耐えているんだそうです。高機動戦を行うMSならおそらくあるだろうなということで、描写をいれました。

装甲について
MSの装甲は一応ガンダリウム合金製のものが優秀で、ハイザックなどのチタン合金セラミック複合材は不優秀ということになっています。ですが、ビーム兵器の前では直撃を受ければひとたまりもないことは同じなので、マラサイの装甲がハイザックに優る点は何かと考えた場合、おそらく実体弾式のマシンガン程度ならびくともしない(初代ガンダムがそうであったように)ということなのではないかと考えました。ハイザックの装甲はきっと弱いのでしょう。

ヒートホークについて
装備質量比の関係で、ビームライフル携行時にはビームサーベルが使えないハイザックですが、果たしてヒートホークがビームサーベルに劣る点は何だろう、と考えた場合、なかなか出てこないのです。ヒートホークとビームサーベルで斬りあったときに、ヒートホークのほうが斬られてしまうわけではありませんし(初代ガンダムの「ガンダム対シャア・ザク」等)、リーチもそんなに差があるわけではありません。なにかあるのかと思っていたところ、数年前ゲームセンターにあったZガンダムのゲーム(「エゥーゴVSティターンズ」でしたっけ?)で、「ヒートホークのほうがビームサーベルより(構えたり斬りつけるのが)遅い」と友人が言っていたのを思い出しまして、今回のような「ヒートホークが不利な点」として使いました。

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RMS-106R 高機動型ハイザック
2006年4個目の完成品です。3月のシャア・ザク以来約5ヶ月ぶりの新作となりました。  U.C.0087すでに旧式化しつつあったハイザックのアップデートプランとして開発された機体という設定です。たしか小林源文先生の漫画だったと思うのですが(ちがってたらすみません)「74式戦車にリアクティブアーマーを装着して、90式戦車に匹敵する能力を得る」という話があったのをヒントにしました。マラサイとの競作機で、機動性の面ではマラサイ... ...続きを見る
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2010/08/30 11:53

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
漆黒の宇宙空間を駆ける黒いハイザック、かっこいいですねえ。一気に読ませて頂きました。ショートストーリーとしてはちょうど良い分量、設定、オチで見事です。

MSの性能を決定する要素として「装甲」は非常に重要なのですね。ビーム兵器の前ではどうにもならないにしても、MSの「戦車」としての側面をかいま見させて頂きました。
エイル
2006/08/18 17:19
感想ありがとうございます。分量についてはもともと長いの書くのは苦手なのでこのくらいに。オチは一番はじめくらいに思いついた部分です。単純なハッピーエンドにはしないのが主義なので。
装甲については、初代ガンダムのころみたいに敵方はほとんど実体弾式とかだとガンダムの装甲の強さが際立つわけですが、Z以降みたいに敵も味方もビーム兵器ってなっちゃうと装甲どうでもいいんじゃない、ってかんじになって難しいところです(ザクのマシンガンでガンダムは一切壊れなかったのに、ハイザックのザクマシンガン改でMkUの脚が壊れたり等、アニメはいい加減です)。
Aesop
2006/08/18 23:02

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