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zoom RSS ガンダム小説 ジオン軍M−1戦車物語

<<   作成日時 : 2007/02/01 17:03   >>

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 「惨敗だ」
 見渡す限り岩と砂ばかりの荒野を疾駆する愛機―M1戦車―のコクピット内で、俺は沈んでいた。
 「そう不景気な面するなよ、。このままあと半日も進めば、めでたく味方陣地にたどりつけるってのによ」
 通信用モニターに映った俺の表情を見てとってか、臨時の僚機―モビルスーツザク―パイロットのジン=クム軍曹が言った。
 そうだ、俺達は、オデッサの戦いで連邦軍に敗れ、大幅に後退した味方戦線を目指している敗残部隊なのだ。
 いや、部隊などと呼べるものではない。俺たちの集団を構成しているのは、負傷兵やその他生き残りの兵隊を車体上面に多数乗せたマゼラベースが1両、クム軍曹のザク、そして俺のM1戦車であり、あまりにも心細い編成なのだ。敵の掃討部隊にでも発見されようものなら、ひとたまりもないだろう。
 本当は、もっと大規模な後退組に混ぜてもらえれば良かったのだろうが、なにせあの大混戦の中だ、敗走するのに方向など選べたものじゃない。

 あの戦闘で俺は、バルク大尉率いるMS隊B中隊の援護の任に着いていた。
 俺の部隊は、基本的には現在の我が軍の主力戦車―マゼラアタック―で構成されていたが、宇宙から降りたばかりの新参者の俺には、開発途中で投げ出された余りもののM1戦車の発展改良型機が与えられていた。
 この機体、余りものといっても、射撃能力にかけては後発のマゼラアタックなどよりは遥かに優れていると俺は聞かされていた。
 わけのわからない砲塔部の飛行機能などない分、積載弾薬数、砲塔旋回性、照準性能などが上回るということだったが、現場の整備兵が言っていたことなので、どの程度信用できるものであったか。
 確かにオデッサの戦いにおいて滑り出しは良好だった。連邦軍の地上兵力の主力―61式戦車―などまったく相手にならなかった。装甲、火力ともにこちらのほうが、圧倒的に優っていたのだから。
 味方のマゼラアタックやザクとともに、順調に戦果を上げていけそうだった。そう、あの白い奴があらわれるまでは…。
 突然だった。部隊の最前列にいたザクが白光に貫かれ爆発四散したのは。
一瞬、俺は何が起こったのか理解できなかったが、次の瞬間、味方のザクが、2機、3機と無残な屍をさらしている頃には状況を理解できていた。
 いたのだ。敵にも。モビルスーツが。それもかなり強力な武装、ビーム兵器を装備した奴が。
 やがて、ザク隊の後方から援護を行なっていた俺のモニターでも敵モビルスーツの姿が確認できるようになった。
 ー機のザクが、マシンガンを掃射しつつ勇猛に敵モビルスーツへ向かっていった。
 シールドに書かれたナンバーから判断すると中隊長のバルク大尉のものだった。
 大尉のマシンガンは確かに奴を、あの連邦の白い奴を捕らえていた。無数の弾丸が白い奴に撃ち込まれていった。
 だが奴には弾痕ひとつつくことはなく、満を持して狙い定めた奴のビームライフルは、大尉のザクをことも無げに粉砕した。
 中隊長を失って我々の部隊は散り散りになった。
 敗走するザクを背中からビームサーベルで切りつける白い奴。
 比較的後方に位置していた俺は、奴の毒牙にかかることなくその場を切り抜けることができたが、他の連中は…。
 結局戦線を離れた後、合流したのがクム軍曹のザクと負傷兵を満載したマゼラベースというわけだ。
 それにしても連邦め、なんてMSを作ったんだ。我が軍のザクのマシンガンをまったくよせつけないとは。

 「おい、ゴバート、なんとかこの近くで小休止できそうなところはないか。俺はいいんだが、お客さんが相当お疲れのようなんでな。何とか水だけでも…」
 マゼラベースのパイロット―ティエリー伍長からの通信が入る。
 ティエリーは、訓練学校時代の同期で、ともに戦車乗りとしての訓練を受けた仲だったが、地球への出征は彼の方が一足早かった。それ故、俺と違ってジオン戦車兵として順当なマゼラ系のパイロットとなっているわけだ。
 彼は、その卓越した気遣いのために、"お人好しのティエリー"とあだ名されることもしばしばあった。
 この科白も、炎天下にさらされているマゼラベース上の連中を察してのものだろう。空調の利いたコクピットに納まっている俺には、思いもよらなかったが。
 「ああ、わかった。ナビゲーションシステム:によると、ここから西へ10q程進んだところにオアシスがあるらしい。行ってみるか」
 「何、遠回りするってのか、こちとら1秒でも早く味方陣地にたどりつきたいってのに。まったく、ケガ人なんぞ…」
 クム軍曹が悪態をついた。
 モビルスーツのパイロットというのは、この戦争において自分達が主戦力だという自惚れがあるためか、どうもその他の兵力(戦車や歩兵〉に対して軽蔑の念を抱いている傾向が強いように思われる。もっともバルク大尉はそんな人ではなかったが。
 「俺が先行して安全を確認してくる。文句は言わせないそ」
 所属部隊は違っても、クム軍曹の方が階級は上なのだが、俺はこの意地の悪い上官に対して敬語を使う気にはなれない。あとで上官侮辱罪ででもなんでも訴えるがいいさ。
 俺がアクセルペダルを踏み込むと、M-1戦車の無限軌道の巻き上げる砂塵の量がそれまでの数倍にふくれあがり、後方モニター上のザクとマゼラベースは見る間に小さくなっていった。
 見えた!オアシスだ。幸い敵の駐留部隊もいないようだ。負傷兵が休息するのに十分な日陰もある。各センサー類にも反応はない。,
 「こちらゴバート伍長。目的のオアシスを発見。敵の不在も確認。ゆったりとくつろげそうだ」
 「了解。我々もそちらへ…。どわァ!!」
 ティエリー伍長の返信が終わらないうちに異変は起きた。
 後方モニターに視線を移すと、高々と舞い上がる爆煙と砂塵が見える。ティエリー達のいたあたりだ。
 「どうした!?ティエリー!!」
 「れ、連邦のパトロールに見つかっちまった。初弾で右キャタピラがやられて。うわああ、ジャンセンが、ラドルフが…」
 狼狽しきったようすで、最初の犠牲者の名を口にするティエリー。
 「機種は?」
 「フライマンタ。戦闘爆撃機だ。数1」
 今度は、クム軍曹が答える。
 空から、か。俺の脳裏に不吉な予感がよぎる。古来、幾多の戦役の中で地上兵力、ことに戦車というものが航空機による攻撃に対していかに無力なものであったか。それは、戦史の専門家でなくともわかる、あまねく知れわたった事実である。
 対空砲火型のザクタンクでもいてくれれば。
 俺の思いとは裏腹に、今、俺のそばにいる味方は…クム軍曹のザク。こいつ一機きりだ。
 マゼラをしとめた後、一撃離脱戦法で遠ざかっていくフライマンタめがけ、クム軍曹のザクがマシンガンを掃射する。残弾数はかなり少ないはずだ。しかも対空砲弾など装備しているはずもなく、対地用ドラムマガジンのままとあっては、クム軍曹の射撃の未熟さと相まって命中することなど到底期待できようはずもない。
 フライマンタが、今度は射線上にザクを捕らえたようだ。クム軍曹が、背部スラスターを作動させてジャンプを試みる。
 タイミングが遅い。あれではいい餌食だ。
 だが、俺の悪い予想は、あらぬ方向からの一条の火線によってくつがえされた。
 ティエリーだ。マゼラベースの機銃がまだ生きていたのだ。補助武装の対地用機銃だ。距離もある。まんまとフライマンタ.にかわされてしまいはしたが、クム軍曹の寿命が延びたのは確かだ。
 ティエリーの奴、黙って殺られたままになっていれば、敵の注意を引くこともないというのに。
着地を終えたクム軍曹は、ティエリーに礼を言うこともなく、ザクを疾走させる。もはや弾は撃ちつくしたのか、マシンガンは捨ててしまったようだ。クム軍曹の腕では、フライマンタの攻撃を振り切るのは不可能だ。何を考えたのか、ティエリーのマゼラベースの方へ向かっていく。
 フライマンタのミサイルが発射される。3発だ。今度こそ、クム軍曹も…。
 「何ッ!?」
 俺は驚きの声を上げた。
 クム軍曹が予想だにしない行動に出たのだ。
 ミサイルを避けきれないと見てとるや、彼は、マゼラベースの陰にザクをまわりこませ、マゼラベースを横倒しにしてしまったのである。
 「そ、そんな、いくら遮蔽物が無いからって味方を盾にするなんて!!」
 一発、二発…本来ザクを狙って放たれたはずのミサイルが確実にマゼラベースを粉砕していった。まだ、生き残りの負傷兵も何人か乗っていたというのに。俺は、敵である連邦軍のフライマンタ以上に自軍の上官であるクム軍曹に憤りを感じた。
 三発目がついにザクの脚部に命中し、ザクもほぼ行動不能になった。
 次はいよいよ俺の番、か。
 M1戦車には主武装の175m砲のほか、歩兵牽制及び対戦車ミサイル迎撃用の機銃が、砲塔部と車体部に一門ずつ装備されている。
 どれも対地戦用としては、強力無比であることは折り紙つきなのだが、対空戦闘となると…。そもそも仰角が足らないのだ。
 設計上の仰角の範囲内で空からの敵に照準しようとしても、よほど低空を飛んでいるのでない限り、有効射程外になってしまうし、敵機の投影面積も小さくなってしまう。
 有効射程内で、しかも敵機の投影面積が大きくなった状態で射撃を行なうには、出来るだけ敵の真下に近い角度から狙う必要があるのだ。
 仰角さえとれれば。
 やはり戦車で航空機には勝てないのか。先程のティエリーの無残な最期が頭に浮かぶ。
 機体を傾けられ、ザクの盾にされ、ミサイルを散々食らって大破するマゼラ…。戦車のパイロットだからって、そんな一方的で理不尽な理由で死ななくちゃいけないのか。
 「クム軍曹、最初にマゼラベースが撃たれたとき、フライマンタのミサイルが何発発射されたか憶えているか?」
 「た、確か三発…だったな」
 「そうか、ならばそのままそこにじっとしてろ」
 「な、何だと!!」、
 脚部を破壊されても、腕だけで回避行動をとろうともがいているクム軍曹を、俺は制した。
 フライマンタの主武装は、6連装ミサィルランチャーだ。クムの言ったことが確かであれば、初めに3発、次に3発で、もうフライマンタにミサイルはないということになる。もちろん次は対地機関砲による攻撃ということになろうし、機関砲といえども、薄い上面装甲に喰らえばひとたまりもないことは俺にもわかっていた。だが…。
 フライマンタが正面から接近してくる。.
 俺はM1の前面をザクの脇腹にぴたりとつける。
 この位置関係なら、遠く前方から向かってくるフライマンタに対して、全高の低いM1は、ほとんど機影をさらすことはない。現段階で機関砲を撃たれても、ザクの分厚い(?)装甲が守ってくれる。悪くても強靭なM1の正面装甲で受けられるのでまず心配は無用だ。ただクム軍曹の勘定違い、もしくは俺の知らない間にマイナーチエンジが行われて、フライマンタの装弾数が増えていたりすれば、ミサイルを喰らってザクもろとも御陀仏ということになるが。
 突如、フライマンタが旋回を開始した。
 "死のサークル"だ。大昔の襲撃機が対戦車攻撃の際、自機のスピードを殺さずに目標の狙いを狂わせないためにとった戦術。
 こちらの読みのとおり、奴はミサイルを使い果たしていたのだ。
 機関砲では、ザク及びM1の正面装甲を撃ち抜くのは難しいと判断したのか、後部にまわりこんで、上面及び後部装甲を狙うつもりらしい。
 フライマンタがM1の後方につける。
 降下角度は浅い。これなら。
 機関砲の火線が砂漠を焦がしていく。その先には、俺のM1戦車が。
 「そんな古風な戦術で」
 このときを待っていたとばかりに、俺はアクセルペダルを床まで目いっぱい蹴りこんだ。
 M1の無限軌道が、ザクの装甲を掻きむしりつつも乗り越えていく。この世の終わりとも思える悲痛な金属の叫び。
 ザクを乗り越え前にのめりざま、俺は砲塔を180°回頭させた。車体はしっかり傾いている。これで仰角は十分だ。
 射撃のタイミングや照準の細かい微調整は賢いハイテクメカがやってくれる。あの白い奴じゃあるまいし、当たりさえすれば壊れるはずだ。
 「当たれえ!」
 頼もしいともとれる反動とともに射出された175mm滑腔砲弾は、紛うことなくフライマンタに命中。オデッサ砂漠に鉄の墓標がまたひとつ増えることとなった。
 敵機が撃墜されたのを見てとってか、クム軍曹がザクのコクピットからはい出してきた。
 手を振りながら愛想笑いなぞ浮かべて。
 結局生き残ったのは、俺と底意地の悪いこの軍曹だけってわけか。ティエリーも他の負傷兵たちも無念の最期を遂げていったというのに。
 「おまえのような奴は!!」
 俺は、175mm砲の照準レティクルをクム軍曹に合わせた。
 だが、俺がトリガーに指をかけた瞬間、上方警戒センサーによる警告音が鳴った。
 ルッグン。
 味方のパトロール機だ。
 思った以上に俺たちは味方戦線へ近いところまで来ていたらしい。
 先程までの騒ぎを嗅ぎつけて救援にでも来てくれたつもりなのか。
 「ちっ、今頃になって!」
 結局、この遅すぎる救援機によって、味方殺しの卑劣な軍曹一人の命だけが救われることとなった。

                                                     Fin




メカ紹介


M1戦車―昔、講談社から発刊されていた「ポケット百科のMSV版」にほんのちょっと、ジオン      軍の陸上兵力ということで掲載されていました。(決して筆者の独断でっちあげではあ     りません。)基本型のM1戦車とその発展型の設定がありましたが、今回の小説で主      人公が搭乗しているのは、この発展型の方です。
       マゼラアタックのルーツという設定ですが、射撃能力は上回っているということにし     ています。主砲の175oもマゼラトップ主砲そのままです。
       それにしても、未来戦車とはいえ、デカイよなあ。
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フライマンタ―「機動戦土ガンダム」に登場する連邦軍の主力戦闘爆撃機。本来は六連装ミサ       イルランチャーのみしか武装の設定は無いのですが、「戦闘機としての要素もある       のだから、機関砲も装備しているだろう」という解釈で、登場させてしまいました。
        また、本来、モビルスーツの機動性は航空機をも陵駕するらしいのですが、MS        戦記の中には、「フライマンタに殺られるグフ」ってのもいましたし、パイロットの技       量がなければ、このくらいの脅威となってもよろしいんじゃないでしょうか。
        ちなみに、ゴバート伍長が言及している「バルク大尉」は、MS戦記に登場したバ       ルク大尉のつもりです。
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マゼラベース―いわずと知れた、マゼラアタックの車体部分です。コミックボンボンの「MS戦         記」で、敗残兵をたくさん載せて敗走していくシーンがありましたので、今回この        ような役回りとなりました。



おわりに
 以上は、実は最近書いたものではなく、1996年当時に出入りしていた模型研究会の会誌用に執筆したものです。このたび、より多くの方に読んでいただこうとワープロ打ちをしなおし当ブログにアップする運びとなりました。M-1戦車の模型も当時作ったものです。
 扉絵は96年当時、友人のエイルさんに描いてもらったものです。

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オリジナル作品1(少女とロボット)
大変ご無沙汰しております。 まあ、仕事やら私事やら色々ございまして。 さて、久し ...続きを見る
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2007/02/10 00:13
ガンダム小説 ジオン軍ザクタンク物語
 *この作品は既出の「ジオン軍M-1戦車物語」の続編となっております。未読の方はこちらをお読みになってから読んでいただくとより楽しんでいただけると思います。 ...続きを見る
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2008/12/27 15:13

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
戦闘の花形兵器MSばかりが人気があるガンダム世界ですが、やっぱりもっとオーソドックスな戦車や砲兵、歩兵さんやら輸送部隊がいるわけですよね。それらにスポットを当てた本作品は作品世界を広げるという点からも、まさにマニアによる、マニアのためのものといえましょう。
最近のMSイグルーや、1/35でのバンダイの商品展開からも、これから脚光を浴びる分野なんじゃないですか?
エイル
2007/02/04 13:40
感想ありがとうございます。
M−1戦車は、ポケット百科で始めてみたときに「ジオン軍にも戦車らしい戦車があったんだぁ」と感動をおぼえた機体でして。嬉々として模型を作り始めた記憶があります。やはりストーリは模型製作期間中に浮んできて、MS乗りと違って脇に追いやられがちなサブメカの乗員にスポットを当てようと思いました。
ワッパやヒルドルブがインジェクションキットになるご時勢ですからね。こういうマイナーな予備設定にもスポットが当たって欲しいです。
Aesop
2007/02/04 17:24

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